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薬丸岳・虚夢 [シルバーウィングでGO]

薬丸岳の「虚夢」を読んだ。刑事物から離れて突然重いテーマの小説を手にしてしまったが,手にした後悔にも拘わらず,一気に読まざるを得なかった。
それにしても,深刻なテーマだ。扱われているのが精神障害者による殺人であり,被害にあった本人や家族が法律に置き去りにされ,怒りも,悲しみも癒されることがない現実が書きつづられる。
加害の精神障害者は以前は精神分裂病と呼ばれた統合失調症の青年・藤崎。幻聴や妄想から,公園で遊んでいる子供や母親を無差別的に殺傷する。ところが刑法39条の規定により,不起訴となり,3年で市民生活に戻る。その青年・藤崎と,娘を殺され自分も刺されて死生をさまよった女性・佐和子が街角ですれ違うところから事件は異様な展開を見せ始める。
佐和子が統合失調症のような行動をするようになって,元の夫・三上を困惑させるが,実は佐和子の統合失調症は詐病で,藤崎を殺害して復讐し,無罪もしくは減刑で司法に復讐し,自首して詐病を告白しマスコミにも復讐しようという計画だった。結果的に,元の夫・三上等の力で佐和子の計画は実行されずに,穏やかな日常を取り戻すというエンディングだ。
それにしても,非常に重いテーマと現実にあり得るような展開を,作者薬丸岳はどうやって思いつくのだろう。被害者である佐和子や三上などのように実際に法律に置き去りにされている人を取材して,小説にまとめ上げ,社会に一石を投じようというのだろうか。
統合失調症は発症率が1%ぐらいだそうだ。思ったより多い。患者の家族の場合,発症率は急激に跳ね上がるという。ただ,そのような病気を患っている人は私の身の回りでは目にしない。今は,症状を改善する良い薬もあるそうだから,普通に生活しているのかもしれないなあ。
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LargeKzOh

自分は佐和子の藤崎・司法・マスコミへの復讐が成し遂げられた後に実は何も残らなかった空虚さを描いた方が効果的だったと想っています。
その方がシェイクスピア的な悲劇だったと。
by LargeKzOh (2019-01-11 21:34) 

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